あらすじ

今から千五百年ほど前の事、根来の里、根来山の麓西坂本に子どものいない夫婦が住んでいました。室屋右兵衛尉忠家とその妻です。
「小野小町の墓に祈れば子が授かる」里人達の噂を聞いた忠家の妻は、早速墓に詣でました。その甲斐あってかわいい女の赤ちゃんを授かり、桂姫と名付けました。姫は、小町とうりふたつの美貌でしたが、ひどい縮れ毛で、住蛇が池の水をつけなければ、まっすぐな美しい髪になりません。
16歳の時、和泉国尾崎の大原源蔵高広という北面の武士に嫁ぐ事になりました。婚礼の日、にわかに嵐になり池の中から大蛇が現れ、姫をさらいました。
数日後、池畔で姫の無事を祈る母と高広の前に、姫が現れ、あの大蛇は、百夜通いの因縁で池の主となった深草少将だと告げます。小野小町の生まれ代わりの自分は、深草少将と結ばれる運命にあったのだと…そして今の幸せを語り、これからは、住蛇が池の夫婦神として根来の里を守り続けると約束してまた光の中へと消えて行きました。

登場人物

桂姫小野小町の申し子。生まれつき髪が蛇のように縮れているが、不思議にも住蛇が池の水をつけるとまっすぐな黒髪になる。
大原源蔵高広白河法皇を護る北面の武士、弓の名手で文武両道、背が高く容姿端麗。桂姫の話を聞いて悔しいながらも現実を受け止める。
室屋忠家桂姫の父。都から来た文官役人。里人には室谷の殿様と呼ばれている。
忠家の妻桂姫の母。子宝が欲しい切なる願いのために小野小町ととんでもない約束をしてしまう。
小野小町美人の誉れ高く六歌仙と謳われる才女。深草少将の求愛にすげなくするも、百夜通いの顛末で少将の怨念に悩まされ、自らも成仏できずにいる。

初演

2016年11月6日 和歌山県民文化会館 小ホール
音楽劇「住蛇が池の花嫁」
・脚本:杉山みかん
・作曲:森川隆之