あらすじ

「恋小袖の瀧」それは、山里の娘お万と、平維盛のはかない恋の物語です。
今から800年ほど前、続く負け戦に平家は存亡をかけて熊野水軍を味方にと使者をたてました。清盛の孫、維盛です。水軍は、清盛にひとかたならぬ恩があります。その孫の頼みなら必ず聞いてくれると思ったのです。家来の衛門嘉門兄弟と共に小森谷へ入った維盛は、木地師彌平に身を寄せました。彌平の娘お万は、維盛にひとめぼれ!身の回りの世話をするうち維盛に愛され里女房になりました。
同じ頃、武蔵坊弁慶も義経の命令で、田辺の庄に入っていました。弁慶は水軍の長「湛増」の息子です。義理を立てるか親子の情けか…。悩みぬいた湛増は、赤白7羽の鶏を戦わせ神託を仰ぎました。白が勝ち軍配は源氏に挙がりました。
失意の維盛は、杉谷山の頂きで護摩を焚き祈りました。「平家に希望があるならば煙は高く昇り給う」煙は、谷底深く落ち行きました。覚悟を決めた維盛は、那智の滝壺へ身を投げました。衛門嘉門もすぐさま後を追いました。
あわれお万の運命やいかに…。今に残る赤壺白壺、護摩壇山にその悲しみが残されています。
見初め見染めて恋小袖 愛しいお方の為ならば たとえ火の中水の中

登場人物

お万賢く美しく気立ての良い田舎娘。維盛の世話をするうち里女房となる。維盛が那智の滝から入水後、自らも命を絶つ。
平 維盛清盛の嫡男重盛の嫡男。つまり平清盛の直系の孫。
富士川の戦いに負けて、滝口入道(高野聖)を頼り高野山から龍神小森谷に逃れ、身の周りの世話をするお万と恋に落ちる。屋島の戦い(負け戦)のうわさに山に登り護摩を焚いて平家の行く末を占い、凶と出た占いに悲観し那智の滝から身を躍らせて入水自殺。
武蔵坊弁慶『義経記』では熊野別当の子で、紀伊国出身と伝承されるが不明。
衛門維盛の家来で、嘉門の兄。維盛死後、兄弟2人で差し違え滝(衛門嘉門の滝と伝えられる)に投じる。
嘉門維盛の家来で、衛門の弟。
木地師 彌平お万の父。元平家ゆかりの滝口の武士。故あって滝口入道の計らいで、小森谷で木地師(漆職人)となり住まう事30年。
たきお万の母、彌平の妻。木こりの家に育つ働き者。

初演

2018年10月7日 和歌山市民会館 小ホール
音楽劇「龍神村伝説 恋小袖の瀧」
・脚本:杉山みかん
・作曲:石若雅弥